FFTによるスペクトラム観測
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コンバーター

筆者はスペアナを所有していないが、何とかして送信スペクトラムを観察したいと思い始めた。パソコンで使えるFFTはフリーソフトのWaveSpectraが有名である。これはパソコンのサウンド・ボードを使うので、当たり前だがオーディオ帯域に限定されてしまう。しかし、測定対象のRF信号をAF信号にコンバートしてやれば擬似的ではあるが観察できそうである。ということで手持ち部品を使いコンバーターを製作してみた。構成はDBMにアッテネーターを組み合わせただけである。RFポートとLOポートにはアッテネーターを組み合わせてある。LOは外付けでSGもどきの秋月DDSを使用している。IFポートは3dBパットを通した後、アイソレーション用のAFトランスとレベル調整用のボリウムを介して出力端子に接続されている。

ケース内にアース用の生基板を敷いて、そこへパーツ類を直接、半田付けしてある。3dBアッテネーターは1/4W抵抗を組み合わせたが、−6dB、-10dB、-20dBは手持ちのミニ・サーキットのものを使用した。もちろん、これらも抵抗を組み合わせたものでもOKである。 DBMはTDKのCB303M4である。これも部品箱に眠っていたものである。アイソレーション用のトランスは10:600オームのものを使用している。

アッテネーター切り替えには小型のトグルスイッチを使っている。50MHz程度までなら使えると思われる。

-20dBカップラー

送信スペクトラムを観察するための小道具として「トロイダルコア活用百科」に紹介されていた-20dBカップラーを製作した。使用したコアは部品箱にあったものであるが、詳細は不明である。このコアに耐熱電線を10ターン巻いた。このコアに貫通させるため、同軸ケーブルを写真のように加工した。外皮はファラデーシールドのため、片側だけをアースする。

アルミケースにBNCコネクタを取り付けて、コアと同軸ケーブルを配線する。同軸ケーブルに通過した電力のうち、-20dB分がトロイダルコアに巻いた電線のポートに現れる。
筆者の自作無線機はほとんどが5W出力なので、このカップラーを使うと-20dBポートには50mWが出力されることになる。

WaveSpectraを使った測定

上記で製作したコンバーター、-20dBカップラー、WaveSpectraをインストールしたPC、ダミーロードを左のように接続する。測定対象は電池管を使った無線機である。このトランシーバーは40mCW専用機で5W出力であるが、このCW送信スペクトラムを観察してみる。WaveSpectraを立ち上げて横軸をリニア、範囲を0-5000Hz、サンプルデータ数を65536に設定する。トランシーバーの送信周波数を7002.5kHz、SGを7000kHzに設定する。コンバーターのIF=7002.5-7000=2.5kHzとなるので、これをパソコンのオーディオ入力に接続する。
送信機は5W出力なので-20dBカップラーには50mWが得られる。LOにはSGもどきを接続するが、こちらの出力も50mW程度ある。コンバーターのATTをRF、LOとも調整してWaveSpectraが適当な入力となるように設定する。DBMで過入力となり、歪みが発生すると何を測定しているのかわからなくなるので注意する。

<写真1>
測定対象の無線機はエキサイター部とリニア部に分かれているので、最初にエキサイター出力を観測した。エキサイター出力は約15mWなので-20dBカップラーを通さず、直接コンバーターRF入力へ接続した。このエキサイターは秋月DDSを2SC1906で増幅してBPFを通しただけである。
予想していたよりもきれいな波形だと思うが、上下500Hz離れたところに基本波-70dBのかなり目立つヒゲが出ている。もともとエキサイターが含有していたものなのか、DBMで変換する際に作られたものなのか不明である。5kHzのヒゲはDBMで作られたスプリアスかも知れない。DC-1.5kHz間のノイズはパソコン本体のものであろう。

<写真2>
これは6BQ5リニアと組み合わせた5W出力を観測したものである。まるでノイズだらけである。基本波のすくそばのスペクトラムは基本波から35dBしか下がっていない。-60dB帯域は1kHz弱もあるので、こんな信号を近所で出されたらたまったものではない。エキサイターとリニアの間にアッテネーターを挿入して出力を2Wまで絞ってみたが、状況に変化なしである。リニアを過入力で使っているわけではなく、リニア本体に問題があることが判った。

<写真3>
今度は807を使ったCW送信機をリニア・アンプにして組み合わせた5W出力を観測したものである。こちらは6BQ5リニアとは雲泥の差で<写真1>のエキサイターのみの波形と比べても遜色ない。基本波付近のノイズレベルは若干、上がったが、上下500Hz離れたヒゲのレベルは下がっている。リニアとしては807の方が優秀である。もっとも807の使い方としてはかなり軽めである。

<写真4>
今度は電池管SSBトランシーバー送信部の50MHzCW2.5Wの波形である。終段は<写真2>と同じ6BQ5をA級で使用しているが、こちらの方がサイドが広がっている。もしかするとオーバードライブの状態かもしれないが、サイドは基本波から-50dBとれているので、このまま2.5Wで使う分にはローカルにも迷惑をかけないと思う。

<写真5>
これはDDSVFOを使った20mトランシーバー6m Transverterを組み合わせた50MHzCW4Wの出力波形である。終段は2SC1971をシングルエンドで使用している。同じ50MHzCWの<写真4>と比べると優秀である。

<写真6>
上記ではDDSの波形を観測したが、比較のためアナログVFOの波形を観測してみる。対象機器は30年物のトリオTS530Sである。TS530Sはドライブとファイナルが真空管のアナログVFOのトランシーバーである。ただし、本機はトランスバーター用にドライバー12BY7の後から外部出力を出せるように改造してある。この14MHz500mWのCW波形を観測した。<写真4>807リニアの7MHz5Wと比べてみるとC/Nが悪いことがよくわかる。

SSB波形については FFTによるスペクトラム観測その2でご覧下さい。

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Last Updated 6/Feb/2007 by mac