秋月電子通商からUSB-DAC KIT(USBオーディオDAコンバーターキット)が発売されたので購入した。
このキットは「 USB-DAC KIT + 真空管バッファ・アンプの製作 」と同じD/A IC PCM2704が使用されており、しかも、1,700円と安価である。
ただし、バツファ・アンプは内蔵されておらず、出力電圧レベルは0.65V程度であるが、USB-DAC入門用のキットとして試してみる価値はある。
D/A ICやチップ部品は基板上に装着済みで、水晶、コンデンサー、抵抗、出力RCA端子を半田付けするだけなので1時間ほどで完成する。
基板のままでは使い勝手が悪いので、タカチの小型ケース(YM−100 W100mm H30mm D70mm)に収納することにした。
USB端子、RCA端子は基板に装着されているので、ケースのその位置に穴開けしてある。
将来、バスパワーではなく自前の電源を使う場合に備えて、電源用のコネクターも装着した。
自前の電源を使用する場合の接続箇所であるが、右側写真赤丸のポリスイッチを取り外し、上側の部分に電源リード線を接続するのが簡単だと思われる。
ただし、外付けでリード線タイプのポリスイッチを設ける必要がある。
使い方であるがPCとUSBケーブルで接続するだけであり、ドライバー等をインストールする必要もない。
PCにインストールしたefu氏のテスト信号発生ソフト WaveGeneで48kHz、16bitの
サイン波を発生させ、USB-DACのアナログ出力電圧を計測してみた。
DACキットにパワー・アンプを接続することを想定して
アナログ出力は10kオームでターミネートしてある。
WaveGeneを1kHz、0dBにセットするとUSB-DAC KITのアナログ出力は0.66Vとなり、10Hz-20kHzまで、ほぼフラットとなった。
データシートのアプリケーションにはヘッドフォンの使用例が示されていたので、試しに51オームと100オームでターミネートした特性も計測してみたが、100オームでも出力レベルが低下し、低域は300Hzからダラ下がりとなった。
この特性では、ごく普通の30オーム前後のインピーダンスを持つヘッドフォンの使用は無理であろう。
筆者は真空管パワー・アンプを使用しているが、出力レベル0.66Vではやはりゲインが不足している。
CDプレイヤーの一般的な出力レベルが2Vとのことなので、それと比べると1/3しかないことになる。
ただし、音質的には特に問題ないと思われる。
このDACキット基板は非常に小型(45mm*42mm)なので、トータル・ゲインを検討した上でラインアンプやパワーアンプに組み込むのも面白そうである。
いつもアンプ作りの参考にさせていただけいてるぺるけ氏のサイトに「秋月電子のDACキットを使ったトランス式USB DAC」というコンテンツがアップされた。
このコンテンツは、秋月電子のDACキットの弱点である出力電圧の少なさと残留ノイズが多いことをトランスを挿入して解消するという独創的なものである。
早速、まねをさせていただいたが、タムラのトランスはちとお高いので、東栄のトランスを使用してみた。
定数を簡単に変更できるように、DACキット基板上の出力DCカット用電解コンデンサーをラグ板に外付けにした。
LPFを形成するコンデンサーは後述する理由で省いてある。
周波数特性は以下のようになったが、低域は100Hzあたりから下がり始め、高域も10kHz手前から低下しており、いささかがっかりするものである。
出力DCカット用電解コンデンサーの容量を倍の440uFにしたり、当初、付いていたLPF用のコンデンサーを半分の0.01uFにしても特性的には顕著な変化がなかったので、最終的にLPFを形成するコンデンサーを省くことにした。
LPFを構成し、信号源インピーダンスを一定に保つ役割もある150オームの抵抗も増減してみたが、増やすと高域の落ち込みは若干ながら改善されるが、低域の落ち込みが早まり、オリジナルの150オームに落ち着いた。
トランスを挿入することにより、出力は3倍弱の1.82Vと増え、残留雑音は3.5mVもあったものが0.5mVまで低減された。
後から気がついたのであるが、ぺるけ氏のサイトに使用した東栄のトランスのデータがアップされていた。
「ライン・トランス実測データ・・・TAMRAとSansui」 www.op316.com/tubes/datalib/line-trans.htm
周波数特性はこのデータとうり二つでやはりトランスの素性そのものであるようである。
また、-20dBでは低域の落ち込みが早まっている。
歪率特性も素直ではなく、1kHzや100Hzでは途中で盛り上がっている。
普段使用しているUSB-DACは真空管バッファ・アンプ付きであるが、このトランス式はそれと比較するとかなり省電力である。
しかし、比較するとトランス式は低域が弱いのがよく分かるので、いつかタムラのトランスに換装してみたいものである。
トランスをタムラのTpAs-10Sに換装した。
このトランスはプリント基板用であるが、アルミアングルを加工して取り付け用アダプターを作った。
東栄のトランスを使用した時には省いた、LPFのコンデンサーを0.022uFに設定した。
周波数特性は以下のようになり、東栄トランスとは比べものにならないほどフラットである。
また、-10dB、-20dBでも低域が低下するようなことはなく、0dBと同じ特性を維持している。
歪率特性も東栄トランスのように1kHzや100Hzが途中で盛り上がることもなく、非常に素直である。
音は東栄トランスと比べるとクォリティーはかなり向上し、低域も良く出ており、トランスを換装して正解である。
ぺるけ氏の「秋月電子のDACキットAKI.DAC-U2704についてのやや実践的な説明」の「ローパスフィルタ例」に、「このキットの出力信号を増幅しないでそのまま使う場合や、キット自体を自作のヘッドホンアンプなどに組み込んでしまう場合は、最低限のローパスフィルタが必要ですのでその回路をご紹介しておきます。」と記載されている。
秋月のUSB-DAC KITは2個購入し、一つは上述したように「トランス式USB DAC」と使用しているが、もう一つはそのままで
PC用スピーカー・システムと組み合わせている。
そのような訳で、手持ちのパーツをかき集め、ぺるけ氏の定数で作ったLPFを付加することにした。
ハンダ吸い取り線を使い、DAC基板の出力コンデンサーを外し、
その+側から出力を取り出し、
ラグ板上のINに接続し、LPF出力を出力コンデンサーの-側に戻した。
なお、キットを組み立てた時、RCA端子の赤白を逆に取り付けてしまったが、今回の改造でLPF出力をクロスして戻したので、ようやく赤・R、白・Lとすることができた。
ついで、DAC基板上の電解コンデンサーをぺるけ氏の推奨する容量に変更しよう思い、470uFだけはなんとか1000uFに交換できたが、これ以上やるとパターンを痛めそうだったので残りは断念した。
この改造で残留ノイズは0.3mVに激減し、音もクリアーになった。
下図は、 WGから16bit44.1kHz0dBFSの信号を発生させて計測した周波数特性であるが、きれいにフィルターが効いているのが分かる。
「平衡型6N6P差動PP直結アンプ」を製作したが、当然、平衡出力を持ったソース機器が必要となる。
このトランス式DACはトランス2次巻線をアースから浮かせるだけで簡単に平衡出力が得られるので、RCAジャックを3ピンのXLRコネクタ(オス)に換装した。
不平衡出力が必要な場合は、このような変換コネクターを使用すれば、内部でCOLDの3番ピンがアースの1番ピンに接続されてRCAジャックから不平衡出力が得られる。
ぺるけ氏がトランスの前に挿入するフィルダーをLCタイプにするバージョンを発表したので、試してみたいと思い、インダクター等を頒布していただいた。
ラグ板から既存のCRを取り外し、LCタイプのフィルターへ改造した。定数は下記のとおりである。
下記に特性を示す。太線がLCタイプ、細線がCRタイプである。
1kHz0dBのサイン波を入力すると、出力はCRタイプでは1.62Vであったが、LCタイプでは
2.08Vへアップした。
超低域ではLCタイプの方が盛り上りが大きいが、高域ではLCタイプの方が落ち込みが早くなっている。
歪率は「WG、WSによる歪率の測定」による計測であるが、LCタイプの方が良い結果となっている。
試聴するとCRタイプでは外連味のない素直な印象だったが、LCタイプでは明るくヌケの良い音となり、聴いていて楽しいと感じた。
また、CRタイプではボリウムを上げるとうるさく感じるが、LCタイプでは出力電圧がアップしているのにもかかわらず、同じボリウム位置でもそのようなことはなかった。